役員たちはペンシルベニアの自宅でLにお伺いを立てることになった。
Hは成り行きを見守ったが、この時も成果は実らなかった。
Hはついに我慢しきれなくなった。
彼はこの一年間、どんな条件でもかまわないから、とにかくマッチレースをやらせてくれと訴えつづけていたが、Lはいっさい取り合おうとしなかった。
Lはシービスケットをウォーアドミラルと同等の馬とは認めず、西海岸の馬とのマッチレースに応じるような真似をしたら、自分の馬の選手生命にかかわると考えていたのだ。
また、かりに彼がシービスケットをもっと高く評価していたとしても、マッチレースから得られるものは皆無だった。
ウォーアドミラルはすでに、シービスケットと戦うまでもなく、年間最優秀馬のタイトルを獲得していた。
この賞の投票者は、あからさまに東部の馬、とりわけウォーアドミラルをひいきにしていたため、トラックでこの馬を負かさない限り、シービスケットが年間最優秀馬の座を奪取するのは不可能に近かった。
しかもウォーアドミラルはほとんど全力を出す必要もないまま、高額の賞金を稼いでいた。
この馬が出走するレースに自分の馬を出そうとする馬主は、数人しかいなかったからだ。
つまりLにしてみれば、シービスケットの挑戦を受け、自分の馬がタイトルを失う危険。
いかに小さいとはいえ。
危険を冒してまで、馬のスケジュールを狂わせる理由はどこにもなかったのである。
ウォーアドミラルの出走スケジュールに入っている多頭戦にシービスケットが出るというのなら、それはそれでかまわない。
だがLは、マッチレースに応じる理由をいっさい見いだせなかった。
Hは正反対の立場にいた。
彼もLと同様に、シービスケットが最優秀馬の投票と、ひいては競馬史のうえでウォーアドミラルの上位に立つには、この馬をトラックで負かさなければならないことを理解していた。
だが彼もSも、シービスケットを多頭戦でウォーアドミラルと対決させるのは気が進まなかった。
そうなるとAでカウントアトラスがやったような、第3の馬による妨害の危険が生じる。
妨害を受ける危険は、シービスケットのほうが大きかった。
ウォーアドミラルの初速は圧倒的で、どのレースでもほぼまちがいなく先頭に飛び出し、ほかの馬たちから遠く離れて、悠々と内側を走ることができた。
また常足発走のおかげで、ほかの馬たちに妨げられることなく、確実に自分だけでスタートが切れた。
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